円高が続いている。主要な先進国がインフレ抑制のために金利を上げているのに対し、日銀が低金利を続けていることが主な原因とされる。マネックス証券によると、2023年7月時点の米国の政策金利が約5.25〜5.5%、ユーロ圏の政策金利が5.25%であるのに対し、日本の政策金利はマイナス0.1%とのこと。このような状況では、資産を現金で保有する場合、日本円よりも米ドルやユーロで持っておく方が合理的だ。このため、円は売られて価値が下がる。
この状況で外国株式を購入しようとすることは、価値の低い日本円で海外資産を買うことになり、割高だからやめた方がいいという考え方がある。ネット上の情報でも、円安の今は買い時ではないとか、外国株式の高値掴みは避けるべきという主張を多く目にする。果たして今は外国株式の購入を控えるべきなのだろうか。個人的には、その必要はないと考えている。実際、毎月の余剰資金については、淡々と外国購入に充てている。
為替リスクを気にしていないわけではない。今後世界的なインフレが収束していけば、極端な円安は解消されていくだろうし、日本円は有事の際に安全資産として評価されてきた実績もあることから、円高に進む可能性も十分にあると考えている。それなのに、どうして円安の時期にも海外資産を購入し続けるのか。単純に、為替の変動幅が株式市場の変動幅に比べて小さいと考えるからだ。
例えば、現在1ドル145円の為替が、やや極端に円高に振れることを想定して、将来1ドル80円になるとすると、外国株式の日本円での評価額はマイナス45%になる。全ての資産を外国株式に振り分けている場合、評価額がおよそ半分になるわけだから、かなりの損失だ。一方で世界経済は長期的には平均的に年約8%で成長し続けている。資産を全世界株式に分散投資するとして、仮に毎年8%で株式の評価額が上昇していく場合、10年間での評価額は複利でプラス116%となり、約2.16倍となる。つまり、為替で資産が半分になったとしても、株式の成長で資産が約2倍になるのであれば、為替リスクを理由に外国株式を買い控える必要はないと考えている。
さらに、過去200年の株式の動きを見てみると、約77%の期間にわたり株式は上昇しており、約23%の期間で株式は下落している。株式がいつ上昇し、下落するのかを予想することはできないが、タイミングを計らずに余剰資金を投入し続けていれば、77%の確率で株式を割安に購入できたということになる。もちろん購入した翌日に暴落するということもあるかもしれないが、幸か不幸か毎月投入できる金額には限りがある。だから手元資金をタイミングを計らず市場に投入し続けれていれば、長期的にはやはり77%の確率で割安に仕込めていることになる。
資産を円で持つかドルで持つかにより、その時々で損得があるように見えるが、長期的には世界経済の成長が、為替による差損や差益を上回る利益を生み出すと考えている。そもそも長期的に全世界株式に分散投資を行うということは、世界経済の成長により富の総量が拡大していくことが、前提となっている。為替の変動によって投資時期を気にするということは、その前提を忘れてしまっているか、その前提を信じられなくなっている可能性がある。問い直すべきは、投資をする時期ではなく、投資をする前提への理解や信念だと思う。