効率的な市場においては、市場平均に連動したインデックス投資が最適解であり、ほとんどのアクティブ投資はインデックス投資の成績を下回っている。この事実は、株価を予想したり、株価の動きに傾向を見出してリターンを得続けることが難しいことを示している。
ところで、市場には株価変動に一定の傾向が見られるという考え方がある。しかし、一般的に「アノマリー」と呼ばれているこの変動傾向は、多くの人に知られれば知られるほど、その傾向自体が消えてしまう。例えば、クリスマス前に小売業の株価が上向きやすいという傾向があるとして、皆がクリスマス前の株価上昇を見込んで小売業の株を購入するようになれば、株価の値上がり時期はより早まり、クリスマスの頃には、既に多くの人の思惑を織り込んだ、安定した株価となってしまう。効率的な市場においては、株価の傾向もいち早く株価そのものに織り込まれ、やがて傾向自体が解消してしまうのである。
逆に、もし効率的な市場においても消えることのない傾向というものがあり、それを見つけ出すことができるのならば、市場平均を上回るリターンを得ることができる筈だ。しかし、多くの人に知られても消えることのない傾向なんてものが、そもそも市場に存在するのだろうか。もしあるとすれば、それは人間の本能に根ざした傾向だと考えられる。ある特定の状況で、人が直感的に非合理的な判断をしてしまう傾向。後になって冷静に振り返ってみれば、それが合理的な判断でなかったことは理解できるけれど、実際の場面では、人がその非合理性になかなか気づくことのできないような傾向。
少数ではあるが、こうした消えることのない傾向を見出しているのではないかと思われる投資家が存在する。実際のところ、彼らは市場平均を上回っている。著名な投資家であるウォーレン・バフェットは、1950年代前半に投資を始めて以来、年平均20%のリターンを出し続けているし、数学者ジェームズ・シモンズが1988年に設立した投資会社メダリオンは、2016年までの28年間で、年平均28%のリターンを生み出している。もしかしたら、彼らは市場における傾向、それも効率的な市場においても消えることのない偏った傾向を見つけ出すことに成功しているのではないか。彼らが市場平均を継続的に上回ることができるのは、そのためではないだろうか。
あくまで想像の話だ。そうかもしれないし、そうでないかもしれない。いずれにしても、自分にそんな能力はないことを思い知る。そんな優れた能力があると勘違いしたり、市場の歪みに賭けて大きな利益を得ようとしたりすることは、致命的な損失に繋がりかねない。そして、どんな変化の時にも市場に残り続け、世界経済の成長に応じた分け前を確実に得ていくことが、自分にとっては賢明なやり方だ、という結論に至る。よく考えた上での、平凡な結論。でもよく考えたからこそ、持続可能な方法論。
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現代ファイナンス理論のエッセンスがまとめられています。ランダムウォーク理論や効率的市場仮説についての説明、ウォーレン・バフェットやジェームズ・シモンズの投資スタイルへの考察も、とても興味深い内容。物語形式で読みやすいのでおすすめです。