健康のためには空腹の時間を設ける必要がある。「空腹こそ最強のクスリ」という本を読み、そんな考え方を知った。著者は、医学博士の青木厚さん。糖尿病が専門で、糖尿病クリニックの院長をされている方。一般的には健康のためには、一日三食を欠かさずとることが推奨されているけれど、これは食べ過ぎとのこと。胃腸や肝臓に絶え間ない負荷をかけることになり、栄養をきちんと吸収できず、老廃物をきちんと排出できず、免疫力を低下させることになるという。
そもそも食べ物が今のように比較的価に大量に簡単に得られるようになったのは、最近のことであって、人類の歴史からすれば極めて短い期間にすぎない。つまり我々の体は、なかなか食料が手に入らなかった環境で生存できるように進化してきており、飢餓や空腹に強くできている。狩猟採集の時代には、獲物が取れなければ食べることもできなかった。農耕が始まっても度々飢饉に苦しめられた。比較的安定した江戸時代に入っても、一日二食が一般的だったとのこと。朝から晩まで、好きな時に飲み食いし、時には酒も嗜み、間食や夜食もとるというような生活環境は、我々の体には負担が大きいのだという。このため、せめて食事の回数を減らし、内臓が休むことのできる時間を設けてあげる必要がある。そうすることで、内臓が機能を回復し、栄養を吸収し、老廃物を排出し、免疫力が向上することになる。そんな内容だった。
なるほど。内臓を休ませる必要があるというのは、何となく感じていた。夜寝る直前に食べないようには意識していたし、食べてすぐ横になると、翌朝、お腹がもたれているような感覚を持つこともあったから。しかし、だからといって、食事の回数を減らすということには思いが至らなかった。医学博士が、人類の進化や食習慣の歴史まで取り上げて、食事の回数を減らす必要があると言うのなら、きっとそうなのだろう。
本の中で理想的とされていた方法は、一日のうち、16時間ものを食べない時間を設けること。ざっと考えると、20時までに夕食をとり、翌日の朝食を抜き、昼食を12時以降に食べれば、空腹の16時間を確保することができる。最後の食事を終えて12時間を過ぎた頃から、体内の余分な脂肪やエネルギーが燃焼していき、代謝が上がり、免疫力を高めていくのだという。要は、夕食を早めに食べて朝食を抜けばいい。それだけのことだ。「何だそのくらい。わけもない」と、早速実践してみた。
朝食を食べないというのは、なんだか寂しいものだけど、健康のためだと思って我慢した。10時を過ぎた頃に、強い空腹感を感じたけど、また我慢した。まさに今、余分な脂肪やエネルギーが消費されているんだろうと想像しながら我慢した。12時になってようやく昼食を食べたら、おにぎりがとても美味しかった。こうして初日を何とか乗り切ったのだけれども、朝食を抜くことによる空腹感は、思っていたよりも辛かった。
続けることはもっと辛かった。晴れた朝に起きて、気持ちのいい風が吹いていて、鳥がさえずっているのに、何も食べられないまま仕事に行く時間を待つのは惨めだった。午前中はずっと食べもののことを考えていた。仕事はしているのだけど、気がつけば夕食にはあれを食べよう、これも食べたいということばかりに意識が向かう。午前中は以前より無口になり、無表情な人になった。何より不機嫌になった。
現代人は食べ過ぎであり、内臓にも休む権利があり、免疫力の向上には空腹が必要であるということは、きっと正しい。ただ、これを実践することは辛かった。理論上、一日二食は健康的に正しいことなのかもしれないけれど、朝食を抜いて仕事をするようになってから、周囲から話しかけられる回数が減っているように感じはじめた。気のせいならいいけど、そうでもないような。空腹は、自分にとって社会生活上の不利益をもたらしているような気がしてきた。
そんなわけで、もう朝食を抜くのはやめた。長い間ずっと朝食を食べてきたのだから、食べないと寂しいし、何より元気が出ないと開き直った。無口で不機嫌だと周囲との関係にも影響が出る。その代わり、朝食の内容を少し変えてみた。パンや米などの炭水化物を減らして、シチューやスープとナッツのように、タンパク質を多めにとるようにして、食べる量を減らした。どうせ内臓に働いてもらうなら、少量精鋭の栄養素のために働いてもらおうとい考えたわけだ。あと、1日を通して食べすぎないようにしている。
大切なことは、胃腸や肝臓に過度な負担をかけないこと。この本で勧められている方法をそのまま実践してすることは難しかったけれど、食べすぎには気をつけようと思えるようになったから、この本を読んでよかったと思う。
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