スポーツについて、個々の試合について確実な勝敗予測はできないけれど、長期的にどのチームが強いかということを、ある程度予想することはできるようだ。一回の試合では、偶然の要素が実力の要素を上回り、実力で勝る者が負けることはあるものの、何度も試合を繰り返していくことにより、偶然の要素が次第に弱まり、実力に見合った勝敗傾向が現れるようになるという。
競技によっても、もともと偶然の要素が強く影響するものと、偶然の要素があまり影響しないものがあるという。例えば、サッカーは、偶然の要素が比較的強い。一回の試合での1チームによる合計得点数は、通常一桁台で、その1点はペナルティエリアでの反則に伴うPKかもしれないし、延長時間に入った得点かもしれない。こういう環境では偶然入った1点が試合の結果を左右するから、偶然の要素が大きくなってしまう。一方、テニスの場合は複数のポイントを獲得してようやく1セットを得ることができ、複数セットを獲得してようやくゲームを得ることができ、複数ゲームを獲得して、ようやく勝利を手にすることができる仕組みになっていて、1ポイントのもつ重みは相対低下する。仮に1ポイントの獲得に偶然の要素が強く影響していたとしても、試合全体を通して見れば、偶然性の影響はかなり小さく抑えられることになる。
確かにそんな気もする。選手からすれば、長期的に勝ち続けていくためには、実力をつける努力をする一方、偶然性の影響を弱めていく工夫が大切になりそうだ。そしてその工夫として手っ取り早く有効なのが、挑戦回数を増やすということ。努力しても結果が出ないことは、よくある。悔しいし止めてしまいたくなる。ただ、努力の方向性が間違っていなければ、実力を伸ばす方向に動いているのであれば、何度も挑戦するうちに結果が出てくるはず。逆に何度も挑戦しているのに結果が出てこないようであれば、努力の方向性を見直した方がいいということになる。
勝敗を予測しようとする者にとっては、話はもっと気楽になる。長期的な予測精度を上げるために必要なことは、偶然性を排除する仕組みをもつ競技と、実力のあるチームを選び、ベットし続けること。それだけだ。個々の試合での勝ち負けや、好調不調の波は繰り返されるけれど、長期的にそのチームが勝ち越していく確率は高い。勝敗予測を楽しむ観客の努力は、競技の仕組とチームの実力を見極めという冷静な判断に集約される。
華麗なパフォーマンスでファンの注目を集める選手として活躍するか、選手をうまく機能させ強いチームを作るマネジメントに実力を発揮するか、優良なチームに投資して継続的に利益を得られる仕組を作るか、スポーツの楽しみ方もいろいろある。もちろん、世界中のファンとともに、大切な人とビール片手に試合を楽しむことも、かけがいのない幸せな時間だ。全てを手に入れられたらいいのだけれど。