「人は生まれながらにして、幸せになる権利をもつ」という幸福追権の理念は、アメリカ独立宣言で明文化された。この考え方は、イギリス王政からの独立を目指す中、圧政に抵抗して自由を獲得しようとする人々の精神的支柱となり、近代国家の成立に大きな影響を与えている。
「幸福を追求する権利」という響きは、圧政への抵抗という勇猛果敢な印象を与える。一方でこの権利は、個人の信条に基づいて静かな生活を送る平和な態度も、肯定しているように思う。人が幸せになるために行動を起こすことも、人が幸せになるために静かに過ごすことも、等しく大切な権利として認められるという考え方は、とても大切だと考えている。
多くの場面で、人は幸せに向けた行動をとろうするし、そうした行動を認める風潮がある。これはとても良いことだと思う。一方で、幸せになるための努力が足りていない、何かをしなくては、というような焦燥感をもつことはないだろうか。あるいは、何かをしていないことを咎めたり、積極的な行動を促したりするような風潮を感じることはないだろうか。
幸せになるための積極的な行動は、もともと前向きな動機から生まれるものだけど、そうした行動がいきすぎてストレスになり、かえって生活の質を下げることもあるように思う。働いて大きな買い物をし、ローン返済のためにまた働く。時間をかけて高価なものを手に入れ、維持管理のためにまた時間をかける。幸せになろうと努力しているのに、負担が増しているような気がする。この場合、そもそも自分にとって幸せとは何か、その行動が自分の幸せにつながっているのか、一旦落ち着いて考えてもいいかもしれない。
のび太は、グータラすることが好きだ。その過ごし方に焦燥感をもっていない。積極的にだらだら過ごして空想にふける。何の取り柄もない平凡な子どもという設定だけど、自分に焦らず、人を煽らず、のほほんと幸せに生きている。もしかしたら、のび太は幸福追求のスペシャリストなのかもしれない。
