自動車を運転することに、強いストレスを感じる。いつでもどこにでも行けるパーソナルな移動手段であるはずなのに、ちっとも自由を感じられないのだ。事故を起こさないように交通規則を守ったり、事故に巻き込まれないように気を配ったり、燃料の残量を確認したり、到着時刻を気にしたりしながら、周囲よりも速すぎず遅すぎず、速度制限は守りつつ、時々周りの車の運転や歩行者の動きにヒヤッとしながら運転する。
こうした作業や気配りを、負担に感じ始めた。遠くに行く必要がある時も、少しお金を払って電車やバスに乗ったり、レンタカーを借りて必要な時間だけ運転する方がよっぽど気楽だ。車検や駐車場代、燃料代を考えると、車を持つことのメリットは、もはやほぼない気がしている。2030年頃にはガソリン車はほぼ電気自動車に置き換わるとも予想されている。自動車走行税というものも議論されているらしい。自動車で走ると税金が発生するって…。もはや車を所有して走らせることを控えさせようとしているようにも思えてくる。タバコやお酒のように。車をもつことに、心理的にも経済的にも、もうメリットを感じられなくなっていることに、ふと気づいてしまった。そんな気がする。
なにより、歩くことが好きだ。何かを考えるのにも、考えずにぼーっと歩く気分転換にも、歩く速度は心地いい。道で工事をしていたり、子供がキャッチボールをしていたり、何か危険を感じたらすぐその場で止まることもできるし、方向転換も自由自在。脇道にそれることも細い路地に逃げ込むことも気分次第。気になる店や花や草を見つけたら、いつでもそっと近づいて眺めることもできる。日差しや風も気持ちいい。雨の香りも悪くない。暑くて汗をかいても、寒くて体が冷えても、家に帰って浴びるシャワーが楽しみになる。もちろん自動車より時間はかかるけど、天気や交通渋滞も、ほとんど到着時間に影響しない。自分でコントロールできることが、自動車の運転よりも圧倒的に多い。自分決められることが多いから、歩くことはストレスフリーなのだ。だから私は、歩きたい。